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2020年09月02週
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(前週よりのつづき)
この危機を乗り切る方法は
私たちが一体になること
コロナウィルス渦中に芽吹く相互扶助 ③

レベッカ・ソルニット 渡辺由佳里訳

今起こっているこの災害のさなか、数え切れないほどの思いやりと連帯の行動を目撃している。この寛大さの精神こそが、私たちをこの危機から抜け出させてくれ、より良い未来へと導いてくれる。

 相互扶助の理想の定義として、「慈善ではなく連帯」が現在では頻繁に浮上する。慈善という言葉は、しばしば苦しんでいる人々が自分で自分のニーズに対処するには無力か無能であることを示唆する。具体的な援助を与えていたとしても、時には自信や自尊心を奪ってしまう。連帯は、なによりもまず、私たちは同じ危機に一緒に直面している仲間だということを確認するものだ。そして、相互扶助は、危機的な状況にあっても、私たちには自分自身の面倒を見る力と能力があることを示す。この用語は、アナキズム哲学者ピョートル・クロポトキンが1902年に刊行した「相互扶助論:進化の一要素」(㊟)に由来している。著者はこの本で、個体よりも他者を援助して守り、集団のニーズに応えることが多くの種の生存に必要不可欠であり、初期の人間と伝統的な社会でもそれが明白だったと主張した。
 コロナウイルスの時代、相互扶助は災害への対応として発生した無数の新しいボランティア協力プロジェクトを説明するものとして使われている。しかし、アウトリーチの状況は複雑で多様である。たとえば、マスクの作成と流通だ。アメリカ連邦政府によるものを含む腐敗した営利目的のものや紛れもない窃盗から、それとはまったく異なる創造的な相互扶助の世界まで、マスク経済にはありとあらゆる領域がある。私を含む多くの人は知人のためにマスクをいくつか手作りしてあげているが、大量生産を始めた人たちもいる。
 サンフランシスコ市地方政府の管理者であるマット・ヘイニーは、彼が働くテンダーロイン地区の貧困者、密集した住宅、住居がない住民のために資金集めをし、何千ものマスクを配布する手配をした。メキシコシティ出身の弁護士アドリアナ・カマレナは、ミッション地区の彼女の家の近所にいる不法移民の日雇い労働者らはこの危機に対応するための物資や医療情報がほとんど得られないことに気づいた。そこで彼女は、布マスクや手指消毒剤を手作りして配布し始め、それに併せて彼らに簡易な情報を教えた。
 その間にも、アーティストであり芸術部の教授であるステファニー・シジュコは、オークランドとバークレーに住む人々の需要に応えるためにマスクの大量生産に腰を据えていた。まずはカリフォルニア大学バークレー校の学生らが抱く食事の安全に対する不安に応えようとするグループのためにマスクを作ることから始め、4月末までに自分で700のマスクを作った。また、ロサンゼルスのパフォーマンスアーティストであるクリスティーナ・ウォンが設立した「アンティー・ソーイング・スクアッド(おばさん裁縫隊)」は現在500人以上のメンバーがいて、ウォンによるとこれまでに2万枚以上のマスクを作成した。
 おばさんたち(おじさんも含まれるのだが、ほとんどはおばさん)は、まず病院勤務者のためのマスク作りから始め、続いて農場労働者、移民・関税執行局(ICE)から釈放された人、刑務所から出所した人、移民コミュニティやその他の脆弱な立場にある集団のために作った。これは、分権的なボランティア主導の組織作りのモデルだ。ニーズを見つけた者が、必要な数に達するまでマスク製作者たちに作成の誓約をしてもらう。そして美しく仕上がったマスクを集めて目的の場所に送る。多くの人は材料費と送料を自己負担し、その他の場合は寄付金があてられる。今週、裁縫隊は、ワゴン車にいっぱいのマスク、マスク作りの材料、ミシン3台を含む資材を、ウイルスで大きな打撃を受けているナバホ族の准自治領に送る予定だ。ナバホは、彼らが手を差し伸べたいくつかの先住民族コミュニティのほんのひとつに過ぎない。
 「おばさん裁縫隊」は、裁縫をする人たちを支援するための調理にまでボランティアの手を広げている。「12時間もミシンの上にかがみ込んでいたら、美味しいパッタイの注文は大歓迎」とおばさんのひとりは私に語った。
 アメリカのマスク製造者たちは、食糧配給プログラムを提供している者のように、政府の失策を部分的に埋め合わせしている。もし連邦政府が危機に備えていて、パンデミックへの対応について科学者の助言を支持していたならば、相互扶助の必要性はもっと少なかったかもしれない。Cobid‐19に対してより脆弱になる潜在的な健康問題はよく話題になってきた。だが、アメリカ全体が、構造的人種差別、貧困、経済的不安、医療へのアクセスの欠如、地方や貧困家庭でのインターネットへのアクセスの欠如、といった潜在的な問題を抱えている。そのために、この危機は本来あるべき状況より深刻になっている。社会保障プログラムに反対する古い保守の議論は、個人や独立した機関の寛大さがこれらのニーズに応えるべきだというものだ。だが、不平等な社会では、それらだけではニーズを満たすのには決して充分にはならない。

㊟クロポトキンの「相互扶助論」は、大杉 栄によって、1917年に翻訳出版されている。「大杉にとって『相互扶助論』の翻訳(1917年10月、春陽堂)は、彼の生涯の文書活動の中でも、高い比重を示すものである」。(大杉 栄選/相互扶助論(クロポトキン)、現代思潮社、1917年解説、秋山 清)。
(次週につづく)

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