日本キリスト教団西宮公同教会・西宮公同幼稚園
教会について
礼拝・諸集会のご案内
小さな手・大きな手
公同通信
教会学校について
公同幼稚園について
どろんこと太陽
関西神学塾:スケジュール
関西神学塾:講師紹介
楽しい学習
賃貸住宅事業部とは
テナントについて
活動内容
アートガレーヂについて
催し物のご案内
リンク
アクセスマップ
お問い合せ
width=1
top>小さな手大きな手
width=639
小さな手大きな手

height=1
2020年09月04週
height=1
(前週よりのつづき)
この危機を乗り切る方法は
私たちが一体になること
コロナウィルス渦中に芽吹く相互扶助 ⑤

レベッカ・ソルニット 渡辺由佳里訳

今起こっているこの災害のさなか、数え切れないほどの思いやりと連帯の行動を目撃している。この寛大さの精神こそが、私たちをこの危機から抜け出させてくれ、より良い未来へと導いてくれる。

私たちの前には長く厳しい道がはだかる。徹底的な変化がないかぎりは、食糧、住処、医療、教育が生産や配分・供給される方法は、以前よりもさらに不公平で破壊的になるだろう。保守派は、残酷な引き締めや最も絶望的な状況にある人々をパタリアニズム的に切り捨てることを主張することだろう。だが、その間にも、残りの私たちは、基本的なニーズを満たすことを賃金労働から切り離す、何らかの形のポスト資本主義を主張していかねばならない。おそらく、スペインが導入を計画しているベーシック・インカムの一種を。
 パンデミックの壊滅的な経済への打撃により、それが高等教育あるいは食糧配給の再考であれ、ニュースメディアの資金調達の方法であれ、イノベーションは必要不可欠になる。グリーンニューディール政策は、化石燃料産業の創始者や気候災害が立ちはだかっているときに、いかにして化学燃料から離れ、職を前向きに作り上げているのかの手本を提供してくれる。PPEを要求する看護師、搾取的あるいは安全ではない労働環境に抵抗する倉庫、宅配、外食産業の労働者など、多くの業界で抗議デモが行われているのとは、労働者の組織が力をつけていることを示している。
 現時点で繰り広げられている寛大さと連帯は、何が可能であり、何が必要なのかを予示していると私は思う。まったく普通の人々の根本的な寛大さと共感は、宝物とみなすべきだ。それを認識し、励ませば、より良い社会を作り出す光になり、エネルギー源になり得る。だが、ほとんどの場合は見過ごされ、見下げられ、妨害される。資本主義は、娯楽、広告、マーケティングにタコのような触手を伸ばし、私たちを消費者に縮めてしまおうとする。つまり、私たちを、物を買うことによって満足感を得ようとする惨めで、利己的で、孤独で、競争力を基本的な社会的勢力だと信じる人々にしているのだ。自由市場のイデオロギーの背後にある駆動力になっている競争力という言葉は、私たちがライバルで物が不足していること、他人が手に入れるものを少なくすれば自分たちがもっと多く得られることを意味している。
 競争は相互扶助の正反対だ。相互扶助は実用的なツールであるだけでなく、観念的な反乱なのだ。少なくとも150年にわたって競争的で孤立を促すメッセージに攻められてきたアメリカのような国であってさえ、何百人もの人々が寛大に手を差し伸べ、現在のような瞬間に可視化されたニーズに応えようと心動かされている事実そのものが、人間性と間の可能性を物語る証である。この衝動は強くて深く、これまでとは異なるものの基盤になりえる。実際に、ヨーロッパで社会福祉が構築されたときや、アメリカで社会的セーフティネットが作られたときや、人々が互いの面倒をみるために小さな規模で自己組織化をしたときがそうだった。
 災害後よくそうであるように、切迫感や運命を共有している感覚のいくらかは薄れていくだろう。けれども、覚えておくべき重要なことのひとつは、それらの感覚の一部はこのパンデミックの前から存在したということだ。資本主義は、相互扶助や家族的ネットワーク、宗教団体と非宗教団体の寛大さ、人権弁護士と気候変動運動団体の骨折り、見知らぬ他人の親切によって常に緩和され、浄化されている大惨事だと私はときおり思う。これらの力や精神がただの清掃係ではなく、課題を設定する主役であることを想像したらどうだろう。
 これまでの災害の後で私が目撃したのは、多くの人が「家に戻る」と「常態に戻る」ことを切望していたことだ。けれども、何人かは、その瞬間に自己の感覚と他人とのつながりの感覚をとても意義深く感じたあまり、危機の間の自分や自分がやったことを、その後の人生に持続させた。ときには、それは優先順位や習慣の変化、新たな行為主体性といった漠然としたものである。珍しいことではないが、それは、新しい連合、新しいネットワーク、新しい政策の優先順位、新しい政治的キャリア、全体をサポートする仕事に就く決断などと同じくらい重要なのだ。物事が常態に戻ることを願う人たちですら、しばしば自分の人となりや、自分にとって最も重要なことが永久に変わってしまったことに気づく。
 パンデミックは、ひとつの時代の終わりと別の時代の始まりを示している。終わった時代の辛辣さを寛大な精神に緩和させなければならない。あるアーティストはミシンにかがみこみ、ある若者は自転車で食料品を配達し、ある看護師はICUの仕事のために防護服を身につけ、ある医師はナバホ族の居留地に向かい、ある大学院生は高齢者のためにピラミッド湖に腰までつかって鱒を捕まえ、あるプログラマーはコミュニティを組織化するためにウェヴサイトを開設する。作業は進行中だ。もし私たちがこれらの衝動と行動の価値を認めることができたら、物事は大きく変わる可能性があるし変えるべきだと認めることができたら、私たちがどんな人間であり、何を求め、何が可能なのかというストーリーを語ることができたら、それが将来の基盤になり得る。

レベッカ・ソルニット
61年生まれ。アメリカの著作家、活動家。著書「災害ユートピア」「シンデレラ 自由の使者(仮)」(河出書房新社より刊行予定)

height=1
[バックナンバーを表示する]
height=1


?????width=80

Copyright (C) 2005 koudoukyoukai All Rights Reserved.