(前週よりのつづき)
同じことがこの国の原子力政策の別の根幹のところで繰り広げられています。日本原燃六ケ所再処理工場です。再処理工場は、全国の原子力発電所が稼働する時に必ず出る使用済み核燃料を再処理して、燃料として使う「核燃料サイクル」の工場です。この核燃料サイクルの根幹の「夢の原子炉」である高速増殖炉計画、実用化は完全に破綻しています。要するに、再処理工場の稼働は、もしあり得るとしても、前提になる高速増殖炉は稼働しないのですからあり得ないことになります。更に、その再処理工場も、既に3兆円近い建設費を投じたにもかかわらず「完成予定は既に当初計画から25年も遅れている」という状態です。「核のごみの最終処分場にしない、という国との約束のもとでサイクルの関連施設を受け入れてきた青森県では、警戒感が強まっている」(以上、1月24日、朝日新聞)。根幹である「核燃料サイクル」が完全に崩れていて、処理工場の稼働が25年も遅れていて、しかし、使用済み核燃料だけは増え続けるのだとすれば、「核のごみ」にしかすぎないものを、他のどこかが受け入れるはずはありません。青森県は間違いなく、名ばかりの核燃料サイクル工場、即ち最終処分場であり続けるよりありません。
もちろん、大熊町、双葉町も、放射性物質という、処理不能の汚染土壌等の「最終」の無い「中間」の要するに「最終処分場」であらざるを得ません。それは、未来にそこに戻って生活することが期待される子どもたちの未来を「裏切る」ことになります。
㊟1、2、3、4
東電福島の事故で、降り注いだ放射性物質の扱い「処理」には、いくつもの困難な問題を抱えたまま除染という「手段」が選ばれます。放射性物質は、無味・無臭で極めて飛翔しやすい、逆に固定しにくい物質である為、除染、取り除くことが難しい物質であるにもかかわらず、除染は人間のその取り組み、取り扱いの手動によるしかなく、途方もない労力と時間を要することになりました。除染は、放射性物質を取り除くいわゆる除染と、それを貯蔵する中間貯蔵施設とでは、窓口が前者については東電、後者については環境省となっているようです。前掲のように除染は一つ一つの作業がほぼ「人力」でなされますが、2020年12月末現在の費用は2兆6975億円となっています(2021年1月27日、東電お客様相談室・花島)。除染され、仮置きされた汚染土壌などが中間貯蔵施設に運び込まれておりその費用について、環境省に問い合わせていますが、具体的な数字はすぐには示せないとのことです。(2021年1月27日、環境省・除染と中間貯蔵施設に関するお問い合わせ窓口・金原)。別に、「膨れ上がる福島第一原発の事故処理費用(ふくしまミエルカPROJECT)」によれば、2016年2月の政府試算で、除染4兆円、中間貯蔵施設1.6兆円となっています。賠償・廃炉・汚染水を含めた総額は、政府試算では21.5兆円です。
㊟5
中間貯蔵施設、及びそれが「中間」であるために設けられた期限が30年です。これについては、2015年3月から、汚染土壌などがそこに運び込まれるにあたって、福島県は国(環境省)に対して、5つの搬入にあたっての条件を付け、そのうちの第一番目「使用開始から30年以内に県外最終処分を法制化」に合意したとしています。(じしんなんかにまけないぞ!こうほうNo,372、2015年2月10日)。したがって、中間貯蔵施設の使用期限は、2045年3月とすることになります。ただ、この合意が極めて、心もとないのは、福島県としては「中間貯蔵施設対策室」を設けたりはしていないものの、限りなく人任せであるあたりです。例えば、中間貯蔵についての費用(運送費、施設費など)は、対策室の担当者は知らなかったりすることです。(2021年1月28日、対策室 羽田)。
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