前週よりつづき)
・2月20日 「除染廃棄物、県外処分へ理解醸成/2021年度、環境省、対話集会」
・2月22日 「第一原発一号機、格納容器圧力低下、地震影響か、放射線量変化なし」
・2月23日 「海洋放出の風評懸念、原発処理水の処分巡り、共同通信被災3県42首長アンケート」「東電、3号機の地震計破損放置、第一原発乃データ取れず」「第一原発号機、格納容器の圧力低下」
・2月24日 「県民から放出反対や不安の声、郡山で処理水シンポ」
・2月25日 「中間貯蔵施設を公開、環境省『県外最終処分へ理解醸成』」
・2月26日 「震度6強、タンクずれ53基」「地震計来月中に復旧、第一原発3号機原子炉建屋」「敷地、浸水防止の放水路を新設、第一原発」
・2月27日 「処理水対応示さず、政府の基本方針改定案」「福島第一原発3号機核燃料、最後の6本取り出し着手」
・2月28日 「ベント設計、途切れた配管、東電に不備、謎の高線量生む(「原子力規制委員会、事故報告書」朝日新聞)」
東電福島の事故対策の「終了」がもしあり得るとすれば、そこにあるすべてのものが、跡形もなくなって、元々の自然の状態に戻っていることなのでしょうが、全く逆で、そこでは終わることのない事故対策が続くことになります。
緊急の事故対策として、今も繰り返されている、除去されるセシウム、除去される多核種は、特製の容器にためられて東電福島の敷地内に仮置きされていますが、その数が当面増えることがあっても、その数も危険も減ることはありませんし、どこか別の場所に移される可能性もありません。「終了」はないのです。
トリチウム及び多核種を含む汚染水も、それが増え続けること、保管するタンクの増設が難しいことを理由に、繰り返し海洋放出が取りざたされ、その最終判断は、「国」ないし「首相」となったりしていますが、そもそもの理解や位置づけが誤っています。いわゆる薄めてするとされる海洋放出は、前掲、水俣病について中村桂子の指摘するように「…海中の食物連鎖の上位にある魚介類を食する人間に水銀(トリチウム)が濃縮される。…それが結果的に悲劇を招いたのです」を、福島で繰り返すことになります。処理不能の放射性物質が、環境中に放出されている事実は、その事実と向き合うよりありませんし、ここでも「終了」はあり得ないのです。
「除染」した除染土壌等は、大熊・双葉両町に確保した土地の、中間貯蔵施設に運び込まれています。この施設が「中間」貯蔵施設であるのは、①、運び込まれる汚染土壌、含まれる放射性物質の「毒」は、数10年、数100年残り続けるから、施設を設置する場所が他で得られない為の「仮」で、最初に汚染土壌などを運び込んだ2015年から30年後の2045年までには、必ず別の最終処分地に移すという約束の「中間貯蔵施設」。②、元はと言えば、最終処分場、地が得られるのであれば、さっさとそこに運び込めばよさそうなのですが、そんな危ないものをすんなり受け入れる場所はありませんから、そもそも無理なのが、処分施設。なのに、最終処分など得られないのは解り切っているのに、言葉を弄ぶことで、可能にしてしまったのが、中間貯蔵施設。だって、ゴールが無くって中間があるマラソンコースだったら、ランナーは走り続けなくてはならなくなります。東電福島の事故で除染された汚染土壌だったら、期限の30年のうち5年が過ぎたのに、最終が決まらない中間は限りなく変です。
そして、放射性物質を環境中に放出することになった、原子力発電所の事故は、電源を失うことで制御が困難になった原子炉で、燃料が溶け出し、その超高温で炉内の設備なども溶かして混ざってしまっているのが燃料「デブリ」です。放置すれば、核反応が起こり、再臨界に達する燃料デブリは、今も外部からの注水で、冷やし続けています。この結果発生する汚染水で、セシウム、多核種が増え続け、トリチウムなど多核種を含む汚染水になって増え続けています。
そうして環境中に放射性物質を放出し続ける「燃料デブリ」の処理は不可欠ですが、あらゆる意味でそれを阻んでいるのが、超高濃度の放射性物質そのものである(デブリ)そして壊れた原子力施設です。
たとえば、圧力容器、格納容器を囲む1号機原子炉建屋の1階の放射線量は以下のようになっています(11月11日、福島民報)。
北西、北、北東、1.7~4.7m㏜/h
西、南西、1.3~4.7m㏜/h
南東、630m㏜/h
南東の630m㏜/hや、2号機格納容器内の毎時210シーベルトと言われる放射線量、1~3号機の格納容器上ぶたの汚染も深刻で、廃炉作業の障壁になると指摘されています。
「東京電力福島第一原発事故を分析する原子力規制委員会の検討会は26日、2019年9月以降に行った調査結果の報告書をまとめた。(「東京電力福島第一原子力発電所事故の調査・分析に係る中間取りまとめ(案)」東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会、2021年1月26日)。1~3号機の原子炉格納容器上ぶたに大量の放射性セシウムが付着していることを指摘し、廃炉作業の新たな障壁として警鐘を鳴らした。原子炉格納容器の底部にある溶融核燃料(デブリ)の取り出しなどを含め、廃炉工程の練り直しを迫られる可能性がある」「報告書案によると、上ぶたは鉄筋コンクリート製の3層構造になっている。1号機で100兆~200兆ベクレル、2号機で2京~4京ベクレル、3号機で3京ベクレルの放射性セシウムが、3層のうち上から1枚目と2枚目の間に付着している可能性があるという」「人を用意に寄せ付けないほどの上ぶたの深刻な汚染は、今後計画されているデブリ取り出しや使用済み核燃料取り出しに影響を及ぼす」「規制庁の担当者は『放射線源として非常に強力。正確な量と化学形態が分からないと手が打てない』としている」(1月27日、福島民報)。
というような、苛酷な条件のもとでの廃炉作業、中でもデブリの取り出しは、その全体を密閉した状況、条件のもとでしか作業は可能になりません。開放するということは、それらすべての放射性物質を、新たに環境中に放出することになりますし、作業に携わる人たちの被曝もまぬがれなくなります。事故の原子炉は、事故対策の為の作業そのものをさまたげるのです。で、実際のデブリの取り出しなのですが、すべては未知の「新工法」で、試作の域を出ない、遠隔操作でロボットアームを使って取り出すとされています。「来年から2号機デブリ試験取り出しでは、重さ10キロほどまで持ち上げられるロボットアームが導入される。今後の取り出し量の拡大を見据え、IRIDなどは産業連携の体制で、新工法の研究を進めている」「その一つは原子炉格納容器の貫通部に伸縮するレールを差し込む『アクセスレール工法』だ。レール上を移動する大型ロボットアームがデブリの取り出しを扱い、デブリを効果的に搬出できる利点がある。新たな『アクセストンネル工法』では床に接しない新たなトンネルに通路を格納容器まで差し込み、ロボットが取り出したデブリの通路を通して搬出する計画だ」(11月14日、福島民報)。東電福島の言われている溶融燃料は、880トンと推計されています。「福島第一原発はメルトダウンの後、核燃料と一緒に圧力容器のステンレス鋼や燃料棒のジルコニウム鋼などが混ざり合い、事故前の重さの最大で4倍ほどにまで増えたとみられている」(前掲、福島民報)。
2000度を超える高温で「溶融」し固まってしまったデブリは、ロボットアームでちょこっとつまみ出すという訳には行かなくて、そもそも、どんな形状のどんな状態で、だからどんな取り出し方が可能かなどのほとんど解っていませんから、・・「重さ10キロほどまで持ち上げられるロボットアーム」も「アクセスレール工法」も、実際にどれほどの働きが可能なのか、ほぼ推測の域を出ません。そのどの場合も、超高線量の放射性物質が作業のさまたげになります。
そしてもし、いくばくかのデブリが取り出されるようになったとして、それは、どんな方法で、どこで保管することになるのだろうか。相手が「低線量」とされるトリチウム及び多核種も、その保管にほとほと手をやいているのが現状で、今度は取り出すとされる超高線量のデブリの場合、取り出してからもすべて、遠隔操作・ロボットアームということにならざるを得ず、そうして作業手順の一つ一つが「産業連携の体制で、新工法の研究」の「研究」から始まらざるを得ないのだとすれば、言われている「デブリ取り出し」東電福島の「廃炉」は、いったいつになるのか、たぶん全くその見通しはたちにくいはずです。
「東電は廃炉の最難関とされるデブリ取り出しを来年(2021年)、2号機で始める計画だ。廃炉工程表の中長期ロードマップの最終段階『第三期』へ移行する大きな節目となる」(11月2日、福島民報)。
前掲のような検討から、言われている「大きな節目」は、当分の間ではなく、ほぼ半永久的にやって来ないと思われます。
(次週につづく)
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