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小さな手大きな手

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2021年05月04週
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先週よりのつづき
 「どうする」「どうする」で、いつの間にか、「海洋放出」に一本化されてきていた、東電福島で溜まり続ける汚染水の海洋放出を「政府」が「正式決定」しました。「東京電力福島第一原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分に関し、政府は13日、関係閣僚会議を首相官邸で開き、海洋放出の方針を正式決定した」「風評被害の上乗せを懸念する県民の反対を押し切った格好だ」「残留するトリチウム濃度を国の基準の40分の1未満まで薄め、2年後を目途に福島第一原発敷地内から放出に着手。2041年~51年ごろとする廃炉完了目標までに放出を終える方針。風評被害には東電が賠償対応する」(4月14日、福島民報)。
 東電福島の重大事故で、環境中に放出された放射性物質は、「放射性物質トリチウムを含んだ処理水」だけではありません。
 どんな、人間的な「手だて」を持ってしても、無くすことも閉じ込めることもできない放射能という毒を、環境中に大量に放出することになったのが、東電福島の重大事故です。「人が制御できない魔物を起こした」(「福島第一原発事故の『真実』、NHK、メルトダウン取材班、講談社」結果の事故、東電福島の重大事故です。「魔物を起こした」結果、放出が続き、溜め続けるよりなくて、溜まってしまっているのが、2021年3月時点で、125万トン、1000トンのタンク1250基を超えてたまり続ける「処理水」という名の放射能汚染水です。
 環境中に放出され、「処理不能」のまま溜まり続けている放射性物質は、「放射性物質トリチウムを含んだ処理水」だけではありません。たとえば、燃料が溶融した結果の水素爆発、それと同時に実施されたベントなどで環境中に放出された放射性物質は、何一つ処理されないまま(そもそも処理不能)、福島を中心に、果てしなく広く、地球環境を汚染してしまいました。たとえそれが、遠隔地で高い濃度で検出され、その被害を訴えることがあっても、東電はそれを「無主物」とし裁判もそれを追認してしまいました。
 一方、事故の結果の緊急の(事故から10年経った今も、緊急)事故対応で環境中に放出される(続ける)放射性物質は、東電敷地の内と外を問わず増え続けています。
 たとえば、こんな具合です。
 事故で壊れた原子炉の、溶融した燃料を冷やす為に、注水して漏れ出す、高濃度の汚染水は2段階の施設で処理されています。

1、セシウム除去施設
 高濃度の汚染水の中のセシウムを除去する施設で、除去されたセシウムは専用の容器に収められ満杯となり次第容器が変換されている。この容器が、東電敷地内に仮置きされ増え続けている。
2、多核種除去施設
 セシウム除去施設で除去されなかった、およそ60種と言われる、放射性物質は、多核種除去施設(通称?アルプス)で除去され専用の容器に溜められ満杯になり次第容器が交換される。この容器が東電敷地内に仮置きされている。
3、使用済みの核燃料
 使用済みの核燃料は、「使用済み」になると、一旦併設されている「使用済み燃料プール」で保管される。使用済み燃料は、遠隔操作で取り出し、特製容器に収められ、特殊車両で、青森県に建設・稼働準備中の「再処理工場」に運び込まれる。再処理という工程の確立が難航し再処理が実施できない為、多くの使用済み核燃料は、行き場を失って、それぞれの原発敷地内、ないし使用済み燃料プールに仮置きされたままになっている。東電福島の場合、そのプールが10年前の建屋の爆発等で大きな損傷を受けている為、移動、取り出しが急務であるが、何しろ損傷が激しかったりする為、取り出しが遅れに遅れている。何よりの理由の一つが、その場所の放射性物質による汚染がはなはだしい為、簡単には手が付けられない。取り出しの始まっている使用済み核燃料は、敷地内の別のプールに移されたりしているが、再処理工場への移動が難しい為、プールではなく、一部で試行されていた専用容器、乾式キャスターに収められ、仮置きされ始めている。
 このいわゆる使用済み核燃料の再処理は、いわゆる核燃料サイクルという燃料を循環させる計画、ほぼ完全に「机上の空論」で、計画実施されようとしてきたが、循環の要とされる「高速増殖炉」の計画、実施が破綻している為、原子力発電の稼働そのものが先の見通しが立っていない。要するに、置き場所も処理も不可能な放射能の毒を増やし続けることになるという意味で、根底がゆらぎ、破綻しているとしか言いようがない。にもかかわらず、一部使用済み核燃料は、イギリス等に依頼し、別の燃料に加工され(MOX燃料)、一部原子炉ではもう一度使用されているが、それとて、「使用済み」となった場合、それから先の「処理」の見通しは立ってはいない。
 という、使用済み核燃料が、壊れた原子炉の壊れそうな燃料プールに取り出せないままで済まないのは、もし、そのプールが損傷した場合、どんな意味でも手が付けられない重大事故になってしまう。そんな、緊急事態が続いているのが、東電福島の重大事故の現場。
4、中間貯蔵施設
 「問題は処理水の処分だけにとどまらない。中間貯蔵施設の汚染土壌などは搬入開始から30年以内に県外で最終処分されることになっているが、見通しは全く立たない」(4月14日、福島民報、論説)。もともと、見通しは立つはずのないのが中間貯蔵。見通しが立つはずがないから、「中間貯蔵」という「虚偽」を「造語」してしまったのがいわゆる中間貯蔵施設。「論説」の「搬入開始から30年以内」の搬入開始は、環境省に確かめたところ、2015年、期間が30年だから、終了は2045年。なのに、2000万トンは超えるとされる汚染土壌の搬入は現在も継続中。帰還困難区域と言われる、汚染土壌がより大量に発生するとされる地域は、「除染」も始まっていない。更に、中間貯蔵とされ、国が取得することになったそれらの場所の取得も100%になっていない。なのに、「30年以内に県外に最終処分」などあり得ない。「県外」ではなく、「県内」の中間貯蔵施設の建設、搬入が、福島県以外の県外に最終処分場の搬出が残り25年となっているのに、着々と進められている。
次週につづく
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