(前週よりのつづき)
「アンダーコントロール」
(2013年、IOC総会でオリンピック招致にあたってのアベ演説)
②
原子力発電所という、存在そのものが危険な施設の稼働は、どんな意味でも放射性物質を環境中に放出しないことが条件でした。しかし、「安定した状態にある」と宣言された原子炉が、燃料が溶融し、「安定」しているということは、単に手が付けられない状態がそのまま続くことを意味します。たとえば、10年経って、事故の原子炉の廃炉、その作業が具体的視野に入ったかのごとく言われたりしますが、ほとんど手も足も出せない状態であることは何一つ変わっていません。たとえば『廃炉作業『次の段階に進む』』と言われたりしますが(7月21日、福島民報)、それが語られている内容は、そのまま、東電福島の重大事故の10年は「手も足も出せない」をそのまま語っているに過ぎません。「――廃炉作業の長期化が懸念されている『7~8年前と比較して原子炉内の状況が分かってきている。2020年には2号機のデブリの試験的な取り出しが始まる予定だ。廃炉は次の段階に宇進みと思っている』――デブリの最終的な処分方法は考えているのか『当然考えている。だが、デブリの状態がよく分からず、取り出す工法によっても発生する量が異なる。原子炉内の把握と試験的な取り出しを終えるには数年かかる。(具体的な処分方法については)も少し時間がほしい』」(前掲、福島民報、山名元、原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長)。
言われている「7~8年前と比較して炉内の状況が分かってきている」がどの程度なのかは、だいたいこんな具合です。事故の原子炉の配管の一部を使い、そこから遠隔操作のカメラを挿入して写した極めて限られた溶融した燃料の状態、ほぼ同じ方法で遠隔操作のロボットアームを挿入して得られた極めて限られた溶融燃料などのことで、それが7~8年経って解ったこと出来たことです。作業が、この程度以上に進まないのは、作業する原子炉建屋の現場が、放射性物質で高濃度に汚染されていて危険があり、かつ、カメラやロボットアームを配管を使って挿入することは、配管からの高濃度の放射性物質排出の危険があり、使ったカメラ、ロボットアームも一旦挿入するそれが高濃度汚染物質になってしまう為に取り扱うことが危険になるという、一つ一つが更なる「手も足も出ない」になってしまうのが、東電福島の事故、燃料が溶融し原子炉が壊れるという現実・事実なのです。
それこそが、東電福島の重大事故であるにもかかわらず、「アンダー・コントロール」というあり得ないことを前提に始まった一つが東電福島の次々と繰り出される事故対策であり、もう一つが「事故の原子炉は安全な状態に保たれている」「放射性物質の危険はない」、従って「日本・東京は安全である」「アンダー・コントロール」というかけ声で招くことが決まってしまった「東京オリンピック」です。
この場合の「一つ」と「もう一つ」は、別のものではなく、つながっているないしは「一体」とすることによって、中でも「一つ」の方を、当事者にとって途方もなく困難で悲惨な決して取り返すことのできない現実であるにもかかわらず、あたかも対策があり得るかのようにして、そのすべてを集約した言葉が「廃炉」です。
しかし、当面6月16日~7月23日まで、地元の新聞が断片的に伝えるどの情報を見ても、環境中に放出されることになった放射性物質は、その除去は不可能であることを、その一つ一つが自ら物語っています。たとえば、東電敷地内で、汚染物の入ったコンテナが数千個単位で「発見」されています。「東電の管理不備露呈/第一原発で内容不明コンテナ発見、汚染物収納、点検追われ」(6月8日)、「『東電コンテナ中身不明問題』548基に腐食、へこみ/目視点検『行き届かなかった』」(7月2日)「第一原発コンテナ、新たに71基で腐食、へこみ、目視点検の1割超で確認」(7月22日、以上福島民報)。敷地内で「見つかった」とされる、数千個単位のコンテナの「中身」が「不明」であったりするのは、しかも「発見」されて2カ月近く経っているのに「不明」であったり、とりあえずの確認も「目視」であったりするのは、納得できる説明、報告ではありません。いつ、どんな経緯で、数千個単位のコンテナに「目視」するしかないような汚染物質が詰め込まれたのか、しかも10年単位でコンテナに「腐食」が起こるような状態で放置されることになったのかぐらいは、すみやかに明らかにする必要があります。なのに、すべてにおいて急いだりしないのは、逆に急ぐことができない理由があるとしか考えられません。その場所が、事故の東電敷地内であるということは、その汚染物質の汚染は、放射性物質と考えるのが自然です。環境中に放出された放射性物質は、それは通常の場合であっても、東電福島の重大事故にともなうものであっても、その状態のまま保管し続けるか、放射性物質の危険をそのまま、別の場所を求めるよりありません。当然、そんな危険なものを受け入れる別の場所は簡単には見つかりません。見つからないまま、保管場所を移動させて実施されているのが、除染した汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設です。
「アンダー・コントロール」が宣言され、「東京オリンピック」となった東電福島の重大事故で、大量の放射性物質が環境中に放出され、場所を選ばず途方もなく広い地域に放射性物質が降り注ぐことになりました。そうして降り注ぎ汚染される地域は、測定される放射線量によって大きくは3つの区域に分類されることになりました。
1. 避難解除準備区域
1~20m㏜/年
2. 居住制限区域
20~50m㏜/年
3. 帰還困難区域
50m㏜/年以上
(次週につづく)
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