選挙に行って、投票しよう
「私は、安心して生きる人が増える社会になるかどうか、つまりベーシックサービス具体的かつ実現可能な提案がなされているかどうか」が、大切な人を選ぶ判断基準(田中優子)。以下、田中優子の「判断基準はベーシックサービス」(10月22日号)から。
まずは住むところを失った人々への公的な住宅の提供、コロナ禍で仕事を失った人々への生活保護の大胆な拡充、収入が激減した人々が計税的に自立できるような働き方の整備を急がなくてはならない。そして、これからさらに経済成長率が落ちてゆくと予想される日本社会全体を、裕福でなくとも安心できるものに組み替えていく必要がある。ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカが「貧しい人とは、いくらあっても満足しない人のことだ」と言ったように、「所得倍増」「経済成長」などの言葉で無限の欲をたきつけることでは、人々はますます貧しくなるだけだ。大事なのは、この国で生きていかれる、と感じることなのである。
高齢者が急増している日本で、その高齢者の貯蓄額が非常に大きい。私も高齢の年金生活者だから理解できる。私は、収入も財産もない90代の母がこれからもし施設に入らねばならない時、どのくらいの費用がかかるかわからない、と感じている。施設を探しても満室であることが多く待機者がいる。在宅介護は本人の意向が一つの理由だが、もう一つの理由は施設の選択肢が限られているからだ。私自身が病気などになり、どうしても母を施設に預けねばならない場合、かなり高額の施設しかない可能性がある。
貯蓄に回ってしまう減税や現金給付ではなく、社会のさまざまな仕組みが安心できるものになること必要だ。介護士や保育士の給与のさらなる引き上げによって人材不足を解消し施設の拡充につなげること、高等教育の無償化の範囲をさらに広げること、選択的夫婦別姓法案を可決して結婚しても女性が今まで通り働けること、同性婚を法制化して多様であることに不安を感じない社会にすること、最低賃金を引き上げること、生活保護申請時における扶養照会の撤廃など、「安心して生きられる社会」について想像力を持てば、さまざまな政策がある。
最も大切なのはその自由な想像力だ。
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