(前週よりのつづき)
・10月28日 「県内企業11社、廃炉現場視察、福島第一原発」「復興拠点外住民意向集約へ、双葉町」
・10月29日 「12月初旬、準備宿泊へ、大熊町、町議会全員協で示す」「移住促進へ協定、県と住宅金融機構が締結式」「仮設庁舎の概要発表、双葉町、議場や防災機能を整備」
・11月5日 「凍土壁温度上昇、排水路に亀裂、東電漏水の有無調査」
言われている凍土壁は、東電福島の事故の4つの原子炉の周辺数キロを囲むようにして建設する氷の壁です。地下約30メートルの深さに、直径およそ1メートルの氷の柱を作り、それを並べて凍らせ全体を氷の壁で囲ってしまう、文字通り巨大な氷の壁「凍土壁」です。言ってみれば地下に作られた超巨大な冷蔵庫なのです。
なんの為に。
燃料が溶融する重大事故の東電福島の何よりの難題は、そこで扱われていた放射性物質を環境中に放出させてしまったこと、それが現在に到るまで止められなくなってしまったことです。放射性物質を閉じ込めるはずの容器である格納容器と圧力容器が溶けて落下した超高温のおよそ3000度の熱で溶け、冷やす為の水が注入されています。冷やし続ける必要がありますが、それとは別に大量の地下水が混ざって、放射性物質で汚染された水を増やしてしまいます。増やさない為、壁を作って阻止するそれが凍土壁です。300億円を超すと言われた建設費用は国が負担していますが、その維持費も並大抵ではありません。
何しろ、言ってみればとんでもない巨大な冷蔵庫ですから、維持する「電気代」だってすごいのです。3,4人の家庭用冷蔵庫の電気代だって「大変」です。たとえば、一般の冷蔵庫の容器にあたるものが、凍らせた氷の壁そのものなのだとすれば、その管理も油断はできないのです。と言うか、地下に埋まってしまっているのですから、壁に使っている素材などが、経年劣化するとしても、その全体の日常的点検はほぼ全く不可能と考えられます。不可能だとすれば、凍っていないらしい場所の温度の変化で推測することになります。「東京電力福島第一原発の建屋周辺の地盤を凍らせ、汚染水増加の原因となる地下水流入を抑える『凍土遮水壁』の一部で温度が上昇した問題で、東電は、凍土壁と内部で交差する排水路に亀裂が生じたと発表した。東電は破損した排水路から漏水したかどうかを含め、温度上昇の原因を調べる方針」「東電は2,3日の両日、排水路の水を抜いて内部を調査したところ、長さ約1メートル、幅約5ミリの亀裂を確認した。亀裂は砂などが詰まっており、漏水した可能性は低いという。東電は今後、遮水壁内部などを掘削し、温度上昇の原因を詳しく調べる」「地中の温度は零度を超えているが、東電は遮水壁の内部で地下水の水位は保たれているため、遮水機能は維持されているとしている」。
遮水壁・凍土壁は、地下約30メートルに、直径およそ1メートルの棒状の冷蔵機能を持った機械を埋め込むことによって作られています。「凍土壁の内部では地下水の水位は保たれている」としているように、元々完全に地下水を止めてしまうことのできない壁です。目視などできない地下に、埋め込まれた「冷蔵棒」ですから、いくばくか、あるいはかなりの「隙間」ができてしまったとしても、「誤差」の範囲と言うしかないのです。そもそもが、壁が存在するだけで、「底」のない冷蔵庫なのですから。「水」という、どんな「隙間」も見逃さない物質を、地下に作った、目視できない壁で阻止すること自体に無理があるのです。現に、冷却する為に注入した水をはるかに超える汚染水が、漏れ出しています。その処理に日々追われるのが、と言うより今までも、今も、これからも追われ続けることになるのが、重大事故の東電福島です。
アンダー・コントロールはあり得ないのです。
そんな東電福島で実施されているのが、県内企業を対象にした視察ツアーです。「東京電力福島第一原発の廃炉作業の地元企業参入に向け、県は27日、福島第一原発で県内企業を対象にした視察ツアーを催した」「昨年度に続き3回目の開催。今回は、県内から11社が参加した。増え続ける処理水が保管されたタンクの現状、使用済み核燃料の取り出しに向けた1号機建屋の大型カバー設置の準備作業などを視察した。富岡町の東電廃炉資料館も巡った」。
東電福島の事故の「廃炉」の定義は、限りなくあいまいです。ただ、この場合の廃炉は、近い将来跡形もない「更地」になるのではないということは推測できます。たとえば1号機の場合、事故からおよそ10年でできそうなことでできていないのが使用済み核燃料の取り出しです。できているのは、「使用済み核燃料の取り出しに向けた1号機原子炉建屋の大型カバー設置準備作業」です。東電福島の事故後の対策で、何よりも急務であるはずの使用済み核燃料の取り出しはおろか、取り出しに向けた1号機原子炉建屋の大型カバー設置の「準備作業」が現状なのです。すべてを阻んでいるのが、「アンダー・コントロール」が難しくなった原子炉事故となっている東電福島の事故の真実であり、事実なのです。
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