(前週よりつづき)
日本は、日本国憲法の前文及び第9条において、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」となっていますが、その日本国において「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」アメリカ合衆国は、合衆国の憲法において、必要とあれば「武力による威嚇又は武力の行使」を辞さないことになっていますし、もちろん世界最強、最新の陸海空軍を保持し、「実戦」の訓練を重ねています。
安保条約において、その前提を明示するのが第3条であり、それを実質的に明示するのが第6条後半部分の「安全保障条約第3条に基く行政協定(改正を含む)に代わる別個の協定及び合意される他の取極めによって規律される」いわゆる「日米地位協定」です。
確かに日本は、日本国憲法を基本とする法治国家で、その憲法は、「前文」及び第9条において、戦争的手段・戦力を保持しないとしています。一方で、安保条約において、日本で展開するアメリカ軍は、アメリカの「憲法上の規定に従う」とすれば、いつだって武力・戦争の準備が整っています。言ってみれば同じ国で、同盟国としてそのことを了解しあって、尚矛盾しないということになっているのが、安保条約であり、そのあり方を具体的かつ詳細に明記するのが「日米地位協定」です。
こんな事がまかり通るのはあってはならない事なのですが、それがまかり通っても、日常的にはほぼ問題にならないし、なってもいないのが兵庫県、西宮あたりに住んでいる人たちです。一方、沖縄で生活する人たちには、日々の生活がそれによって著しくおびやかされ、日常的な事故・事件になり、更に、沖縄島で生活する人たちの根底をゆすらざるを得ない事実・実態にもなっています。更に、それらの事実・実態がそこで生活する人たちの大きな懸念として、今までも、今も、今からも続こうとしています。
日々の生活をする、すぐそこで、アメリカ軍が、具体的な戦争を想定して展開しているからです。
・11月18日 「電子戦機2機嘉手納に飛来、騒音79デシベル」
・11月19日 「普天間つり下げ訓練オスプレイ今月相次ぐ」「嘉手納基地に外来機計8機、2日連続飛来」
・11月20日 「那覇軍港にオスプレイ、3機飛来、県問題視、市は抗議」「嘉手納外来機95.4デシベル、新たに飛来計19機滞在」
・11月21日 「那覇軍港に連日米軍機、大型ヘリ、県、防衛局へ抗議」「米軍関係飲酒運転49件、1~10月県警、既に前捻上回る、行動規制の緩和影響も」
・11月23日 「酒気運転容疑で米海兵隊員逮捕、名護署」
・11月25日 「オスプレイ水筒落下、金属製、宜野湾の民家玄関先」「米軍機事故繰り返す、オスプレイ水筒落下、再発防げず」「知事『危機管理に疑念』」「宜野湾市長、抗議、防衛局長に」「事故件数、訓練増に比例」
・11月26日 「米軍の水筒落下、捜査の対象外、地位協定で適用除外」
・11月27日 「米軍水筒落下、県が抗議、軍港離着陸禁止も要求」「水筒落下に抗議決議、那覇市議会、市町村で初」「『後部ハッチから落下』共産県委に防衛局」「落下映像『かなり衝撃』宜野湾市長、沖縄大使に」
「米軍普天間飛行場所属のMVオスプレイ3機が19日、那覇市の米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に相次いで飛来した。在沖米海兵隊によると整備のため船で米本国に運ばれる。玉城デニー知事は、那覇軍港の目的外使用として問題視。『事前の連絡もなく突然、市街地に位置する那覇軍港に飛来させたことは、県民に大きな不安を与える』とのコメントを出し、抗議する考えを示した。城間幹子那覇市長も抗議声明を出した」「在沖米海兵隊は、使用目的として適切か尋ねた本紙の質問に『頻繁に起こることではないといえ、通常の手順』と回答した」「近くにいた赤理義久さん(72)は、『10年近くここで釣りをしているが、こんなことは初めてだ』と驚いた。『1機目は機体が揺れていて、普通じゃないと思った。低空飛行でプロペラの音が心臓にどんどんと響く感じだった』と話した」(11月20日、沖縄タイムス)。市街地にオスプレイが「低空で飛来し」釣り人の心臓が「プロペラの音でどんどん響く」ことに抗議したりしても在沖米海兵隊は、『頻繁に起こることではないとはいえ、通常の手順』と回答」することで終わります。こうして在沖米海兵隊が「通常の手順」と答えて済ますのは、まさしく日米の合意されている安保条約第6条によって明示されているからです。「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」。市街地の普通に生活する人や観光のレンタカー、バスなどの車が走る、那覇軍港に隣接して走る58号線はそのまま解釈すれば、この条約によって明示されている「施設及び区域」そのものではあるのです。その「区域」は、この場合のオスプレイの飛来した那覇軍港に限らず、その周辺の那覇市街はもちろん、宜野湾市の普天間飛行場からそこまでの「すべての」区域も含むことになります。この「区域」は、更に、沖縄県のどこでだって、「区域」であり得るし、既に、125デシベルを超える騒音のステルスだって、「区域」上空を「低空」で離着陸してしまいます。更に、この「区域」は、安保条約の当事国である、日本のどこであっても「区域」として解釈したとしても何一つ間違っていません。もちろん、兵庫県、西宮も「区域で」であり得ます。しかし、戦闘訓練の為に離着陸する米軍施設などが、すぐそこにはありませんから、低空飛行で騒音におびやかされるということはめったに起こりません。いいえ、いろいろ起こってはいますが、しかし、沖縄では起こり続けます。
(次週につづく)
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